シンポジウム開催の趣旨

 世界のコメの生産量は2005年に年間6億トンを超え、年々増加を続けています。コメは小麦、トウモロコシと並ぶ「三大穀物」として世界中の人々を支えていますが、近年では単なる食糧としての側面だけではなく、米食のヒトの健康に対する効果が注目されています。疫学的見地から見て、米食がヒトの健康に良好な影響を与えているということは従来から知られていました。また、農耕民族と狩猟民族との疾病構造の異なりから、米食の遺伝に及ぼす影響も論じられるようになってきています。
 現在、米食はおいしさの観点から、主に「白米食」となっていますが、コメの有用成分の大部分は、精米過程で除去される米糠に含有されています。古くからコメ糠は各方面で利用されており、そのことがコメの資源としての重要性を高めていました。その後、コメ糠に含まれる有用成分の研究や生産技術の開発が進められる中で、コメ油をはじめ、イノシトール、フェルラ酸、オリザノールなど様々な有用成分が利用されています。これらの成分は、食品、医薬品や各種工業原料として広く利用されており、加えて近年では、メタボリックシンドローム、糖尿病、認知症、がんの予防や治療など、保健や医学的有効性の観点からも注目が集まっています。
 このような観点から、コメの有用成分の作用機序を明らかにし、コメの更なる可能性を追求していくことは、コメという天然資源を活用し、世界中の人々の幸福に直結する崇高なアプローチであると確信しております。今回のシンポジウムが、このような自然科学的なアプローチ以外に、稲作の環境に与える影響や、稲作、米食の文化的な側面を論じる場となり、コメ文化を総合的な観点から捉え、発展させる契機となれば、と考えています。多くの米生産国で、コメの有効利用が積極的に進められることにより、それらの国の環境改善に繋がり、地球規模での自然と調和した科学が振興されることとなることを願って止みません。
 日本においては、縄文時代中期から稲作が始まり、長い年月に渡って繰り返される稲作の田園風景は、日本人にとっての原風景と言えるものになっています。今回のシンポジウムは、疾病予防ならびに、医薬品、食品、飼料などの開発に携わる産官学の研究者や技術者、さらには、コメを通した教育、行政に携わる方々が一同に会する意見交換の場です。本シンポジウムが、コメやコメ糠に含まれる有用成分の機能、およびその作用機序に関する研究やそれらの応用を推進し、ひいては我が国と世界中のコメ文化の発展に寄与するものと確信しております。
以上、本シンポジウムの趣旨をご理解頂き、ご指導ご支援頂けます様、宜しくお願い申し上げます。

第二回国際シンポジウム
「コメと疾病予防」
 組織委員長 南條 輝志男

 

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